ひるねの時間

「犬の日」 96/11/17      みなみ てつや

11月11日この日は何となくウキウキする。

別にたいした事が有ると言う訳でもないのだが、1年の内で1が一番多く揃う日と言うだけで何だかうれしい。特に午前11時11分11秒ともなると、とてもうれしい。1が10個も並ぶのである。子供みたいだと思うかもしれないが、この瞬間が妙に嬉しい。

中学生や高校生だった頃は、この瞬間を見逃すまいと思って必死になって腕時計を見つめていたものだ。11時11分11秒その瞬間になると、教室のあちらこちらから「オオッ!」とゆう声が聞こえてきた。中には数秒フライングする人や皆が一斉に声を上げたのに気付かず、数秒遅れてから声を上げてみんなの注目を浴びてしまうオマヌケな奴もいたりした。みんな結構楽しみにしていたのだ。

それだけにこの瞬間が体育に当っていたりすると、1年間悔しい思いをしたりもした。
学校が終わってから、その瞬間何をしていたかという話しで盛り上がったりもした。
懐かしい話だ。

でも、こういった事もみんながみんな、楽しみにしている訳ではない様だ。特に女の子はほとんど興味が無いようだ。

先日11月11日に会社の休憩時間にこの話しをしたら、男性社員は殆ど覚えが有るようで懐かしそうに話しに乗ってきたのに、私の向いの席の女性社員には「そう?」と一言で片付けられてしまった。そう言えば生徒時代も女子は殆ど興味が無いようだった。
もちろん1が10個揃ったからと言ってなにもいい事が有る訳ではない。他愛の無い事だ。でも男はそういった他愛の無い事が好きだ。これは男の特性のようだ。

向いの席の彼女に軽くかわされた直後に他の男子社員がなにか大事な事を思い出したように言った。「そう言えば今日は犬の日だっけ?」
でも彼女には「知らない。」と、また見事にかわされてしまった。

「ごめんね、他愛のない話しかしなくて。」心の中でそう呟いた。

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