ひるねの時間

「寒い!」98/01/15      みなみ てつや

寒い!
とにかく寒い!

新潟県の冬は寒い。
朝、自炊して弁当を作っている関係上わりと早く起きる。
昨日つくって鍋に残ったまま台所に放置してあった料理が完全に凍っている。少し水を足して暖め直さないと鍋から出すことすら出来ない。
下手に冷蔵庫に入れるよりもこの方が長持ちするかもしれないと思う。

外へ出ても寒い。
通勤のため車を使うが道路も完全に凍っている。あちらこちらで田んぼの中に止めてある車を見る。
交通マナーにうるさい人なのだろうか?通行の邪魔にならないように片輪を道路の側溝に入れて止めている人もいる。それどころか川の中に止めている人もいる。どこから入ったのだろうか?

会社に出ても寒い。
私の放つギャグは寒い。
遠慮しないで笑ってくれればいいのに誰も笑わない。うちの会社の人はみんなおくゆかしいのだろうか?それとも私の言うことは少し難しいのだろうか?とにかく私のギャグはどれも冷気を帯びているようだ。
みんなの緊張をほぐそうとする私の気持ちとは反対にみんなの顔は硬直してしまう。引きつりながら笑っている。うちの会社の人は変わった笑い方をする。気のせいだろうか?

懐具合も寒い。
会社の帰りに翌日のおかずを買いにスーパーへ立ち寄る。
財布を見る。
相変わらず1万円札など見当たらない。
私は福沢さんには嫌われているようだ。子供のころ福沢諭吉を‘ふくざわ ろんきち’と読んでしまったせいだろうか?あのころはまだ1万円札は聖徳太子だった。福沢さんがこんなに偉くなるんだったら読み間違えなんてするんじゃなかった。今更後悔しても後の祭りだが。

家に帰っても寒い。
当然のことだが一人暮らしの私は家に帰っても電気がついていることなど無い。暖房も入っていない。家の中でも30分くらいは上着を脱げない。
凍結防止のために少しだけ出していた風呂の水がちょうどいい具合に溜まっている。手を入れてみる。しびれそうなほど冷たい。

しかしそんな私にも一つだけ暖かいことがある。
それは、新しい家族が増えたことだ。
今までは家族といえばPC−9821Xa7だけだったが、去年の暮れにとうとうPC−VS26DM7というのが増えた。いわゆるバリュースターNXというやつだ。
さっそく2台のパソコン、いや家族を家庭内LANで結んだ。やはり兄弟は仲良くしなければいけない。だからケーブルで繋いであげた。もちろんプリンターも電話回線もみんな共有させている。こうすれば否応無しに仲良くするだろう。 兄貴分のPC−9821Xa7はウィンドウズ95発売前にウインドウズ95対応ということで発売された当時としては最高クラスのパソコンだった。PC−VS26DM7もウィンドウズ98発売前にウインドウズ98対応ということで発売された。同じメーカー製だし型番の最後には7が付くし、そういう生まれた環境もよく似た2台、いや2人だ。
パソコンは私の家族だ。家にいるときは、寝ているときと、風呂に入っているときと、食事をしているとき以外は、大抵パソコンの前にいる。もちろんテレビなど見ることはまれにしかない。
人にその事を言うとそんな事をしているから彼女が出来ないんだと言われる。
自慢をするわけではないが、私は30歳を目前に控えていまだかつて一度も彼女というものを作ったことが無い。
それでも平気でいられるのはやっぱりパソコン、いや家族がいるからだ。
これからもずっとこんな生活を続けていくのだと思う。
そう思うと、
ふと、心も寒い。

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