ひるねの時間

「とまと」98/06/14      飯島 かつあき

先日、深夜営業のスーパーの夢を見た。

コンビニなどではない。豊富な品揃えの生鮮食料品が、棚いっぱいに並んだ正真正銘のスーパーマーケットなのだ。
私は夜中に車を乗り着け、一生懸命に野菜を買っている。レタス、セロリ、タマネギ、キュウリそれにトマト・・・そうトマトだ。

きょう、夕方夢ではなく本当に近所のスーパーに行った時。ツナサラダが食べたかった。私のツナサラダは上記の野菜にツナ缶を加え、塩、こしょう、酢、醤油で軽く味付けをしただけの場合が多い。 今日も夕飯のおかずにエビフライとツナサラダを予定していた。ところが意気揚々とスーパーに乗り込んだ私は、入り口の自動ドアをくぐり買い物カゴを右手に持って2、3歩進み、右手にある野菜コーナーに目をやった瞬間に、大きなダメージを受けてしまった。トマトが無いのだ。いや有るには有るのだが、一目見ただけで巨大でまずそうなトマトしかないと気付いた。私のツナサラダにトマトとレタスとセロリは絶対に欠かせない。
私の予定はスーパーに入ってわずか数秒でもろくも崩れ去った。

夕方そんな事が有ったからだろうか?私は夢の中でもトマトを探していた。
「ここにも無い!」
そうつぶやくとさっさと車に戻り次のスーパーを目指す。しかし、そこにもトマトはない。
その次もその次も何軒探してもトマトだけは手に入らない。
辺りの雰囲気から察するに、もう深夜の2時は過ぎただろうか?
そのうちトマトを買う事など忘れてただスーパーの中をうろうろし始めた。

「こんな夜中にスーパーに買い物に来る人はどんな人なんだろう?」
ふと気になって周りの人に目をやる。
40歳前後の主婦らしき人が2人で話していた。
「最近は深夜営業のスーパーが出来て本当に便利になったわねぇ。」
なるほど、やはりみんな便利だと感じているのか。そう思った。
向こうのほうでは、70歳は過ぎただろうかそのわりには元気そうなおばあちゃんが、八百屋か酒屋といった感じの前掛けをして魚売り場をうろうろしていた。
「今日のおかずは何にしましょう?」
「ははーん。このおばちゃんは近所の食堂の人だな!」とひらめいた。特に根拠はない。夢の事だから。
しばらくするとおばちゃんは前掛けのポケットから携帯電話を取り出して話し始めた。
「今日の日替わりメニューは何がいいだろうかね?」
やっぱり、近所の食堂の人だと納得した。

・・・・・

ふと、すぐ横の乾物売り場の棚を見ると新鮮でみずみずしいトマトが並んでいた。
「なんだ、こんな所に有っちゃ気付かないよ!」そう言いながらトマトをカゴに詰めた。
買い物を終わってスーパーを出るともう辺りは少し白み始めていた。

夢から覚めて思った。凡人ではない商才のある人は、こんなのを発展させて上手に金儲けするんだろうか?
実際に紳士服や生活雑貨といった、深夜営業で販売する事など昔は考えられなかった商売が、今は成立している。電気製品や医薬品なども売れているそうだ。深夜族の増えた現在、こういった深夜の売り上げが、店の売り上げの50%を越える所も珍しくないと聞く。

隙間産業という言葉が使われる様になって久しくなる。思えばすべての商売は隙間産業から発展してきたに違いない。
という事はまだそこら辺にチャンスは転がっているのだろうか?
だとしても、凡人の私には見つける事は難しそうだが・・・

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