「自然に優しいの?」 97/3/9
近ごろテレビで気になるCMを見た。
内容は庭師が植木鉢に植えられたビルを太陽のエネルギーを使って育てるというものだ。環境問題を考える企業というイメージをアピールしたいらしいとの事だった。
実際、ソーラーパネルを事業の核に据えるこの企業は、化石燃料や核燃料を中心とした生活から脱却し、二酸化炭素や核廃棄物を減らすという観点から自然を保護するのに一役買っている
はずだ。
しかし、このCMからは自然保護について考えているというよりも、自然保護が何なのか理解できていないといった印象しか受けられない。
このCMの中で育ってきたビルが枝を出したところ、庭師が鋏で切ってしまうシーンが有る。ほのぼのと描かれているシーンだがどうしても違和感が残る。
皆さんも町内会の活動かなにかで近所の公園を掃除しに行った事が有ると思う。この時、一様にみんな公園の美化だとか公園の緑を守ろうなどといった事を考えているようだが、こういった事を自然に優しい、だとか環境の保護といった事と混同している人も多いように思う。確かに道端に捨てられた空き缶や雑誌などのゴミ類を片付ける事はどちらにも共通するだろう。しかし、自然に優しいのならば雑草を抜いたり落ち葉をかき集めたりはしない筈だ。
私は、子供の頃から本来肥料となる筈の落ち葉をゴミとして扱うのには違和感が有った。それは自然の事を考えてやっているというよりは、人間の好みに合わせて公園の美観を維持しているだけの事だった。
勿論、公園の清掃や管理維持活動が悪いと言う訳ではない。しかし、それが環境問題や自然保護に直結している訳ではないのだ。
そこでさっきのCMの話しに戻るが、やはり庭師が伸びてきたビルの枝を切るというのは、自然に優しいという事がどういう事なのか理解できていないという印象を拭いきれない。
私も園芸が好きでよく庭いじりをしているのだが、植物を育てる為にはどうしてもその草や木の勢いを保つ為に枝を切ったり徒花となるつぼみを摘んだりする。が、それだって人間の好みに合わせているだけで植物自体の事を考えているとは言い難い。あの庭師に切られた枝も、のびのびと育ててやればどうなるんだろうと、TVを見ながらそう思った。