「守ろう自由なインターネット」99/02/14
最近、報道は競ってインターネットを危険な代物にしたがっている。
自殺を手助けする道具や、麻薬の販売ルート、怪しい宗教の入り口など、インターネットを知らない人に、無用の恐怖心を植え付けそうな事ばかりを取り上げている気がする。
インターネットを深く理解している人たちにとっては、あまりの荒唐無稽さに失笑程度で済まされるような内容が多いのだが、社会全体が、その意見に躍らされかねない事を考えると、失笑で済ませるわけにも行かない。
一部のマスコミはインターネットが有る為に、自殺の手助けとなる毒物の販売がなされたり、未成年に有害な情報が垂れ流されたりしているように言うが、それは少し違うと思う。
そういった事は、インターネットが無くても、今までこれ以外のあらゆる手段によって成されてきた事だ。
たしかに、インターネットのホームページは、不特定多数の人が見る。だから、情報の発信者は、その事を念頭においてホームページを作成する必要がある。例えばリンクされた先にいきなり有害な情報が現れるといったような事は防がなくてはならない。しかし、そのホームページに掲載される情報の全てが常に安全で中立でなければならないかと言うと、それも違うと思う。
例えば誹謗中傷など一方的な言葉の暴力による特定の個人又は団体への攻撃や、差別的な意見の掲載、他人のプライバシーの暴露などは、とても卑怯で絶対にやっては行けない行為だ。
しかし、思想、宗教、主張と言ったようなものは、ホームぺージの中に含まれても仕方ないと思う。
偏った思想や有害な画像、宗教や政治など特定の考え方を賛美する傾向の強いもの、など、出来ればまだ分別のつかない未成年には見せたくない。しかし、こういったものも情報であり、実際に必要とする人が存在するし、表現の自由を保証されている我が国においては、誰も規制する権利を有さないことも事実だ。
だから、未成年等にとって有害な情報や、特定の人が見た場合に気分を害するような情報が含まれている場合は、そういった情報が掲載されているページに入る前の段階のページでそういった趣旨のページである事を表示し、それ以上入った場合の影響等注意事項を記載する必要が有る。
こういった処置は成人向け画像を含むホームページなどでよく見るものだが、これも、クリック一つで簡単に中に入れてしまい、現実には未成年者の侵入を防ぐ事は出来ない。しかしながら、ここから先は、もはやホームページの管理者の責任ではなく、閲覧者側の責任なのだ。
やはり、未成年がホームページを見るにあたっては、分別ある大人がしっかりと指導すべきで、未成年にとって有害である情報へのアクセスの禁止や、他人の意見や思想に流されないように指導していく必要がある。
もしそれが無理なら、未成年にインターネットのホームページを自由に見させる事はやめるべきだ。
なぜなら、ホームページは、その情報の提供者が自由に書き換えられるという性質上自主管理が大原則となっていて、どんな有害な物が有るか予想がつかないからだ。
例えば、心無いホームページの管理者が、誹謗中傷、差別、さらには極端に偏った危険な思想などを、掲載していれば、そういったものに影響される可能性も有るし、うまい儲け話などの詐欺行為や、麻薬などの売買、援助交際の斡旋などの話が掲載されていれば、その誘惑に引きずり込まれるかもしれないからだ。
ネットサーフィンとは、夜の繁華街を歩いているのと同じ様な物だ。大通りを歩いているうちはまだ良い。派手なネオンサインや、目新しい情報でいっぱいだ、通りに面した大型店で買い物をするのも良いだろう、しかし、少し裏道へまわると、未成年には無縁なはずの大人の世界が広がっている。更に路地へ入れば法に触れるような危険な物までが甘い声で誘惑してくる。
そういった世界へ、大人の指導無しに未成年を立ち入らせるのはやはり間違った行為だと思う。
違法性の強い物については、規制しようという動きもある。
しかしながら、ホームページは数秒程度有れば書き換えられるという性質上、第三者が管理するのは不可能である。また、ホームページ自身が実際に殺人や麻薬の売買をするわけでもない以上、文章において何を掲載しようとも、法的規制をかける事は困難だ。
その上、海外のホームページも国内のホームページ同様に見る事の出来る以上国内のものだけを規制してもあまり効果が無い。
一部で、検閲などホームページの管理の強化を訴える声がある。
もちろん私も一部の不道徳で悪質なホームページには憤りを感じる。
しかしインターネットの構造と性質上、完全な規制・管理という事は不可能であり、それを目指す事は、基本的にナンセンスだと思う。
日本は情報を得る側よりも発信する側を規制したがる傾向がある。しかしそれは全ての人が良心的であって初めて成り立つ方法論で、欧米では、もはや主流である情報を受ける側が選択するという方法の方がより有効だと思う。
むやみに規制しても、必要とされる物は生れてしまう。禁酒法を出しても酒は密造されてしまう。それよりも、まわりの大人たちが未成年を有害なものから守る事の方が重要だ。
危険な誘惑の多い世の中。インターネットに限らず、分別のある大人が子供達を導いていく事が何よりも必要である。