ひるねの時間

「姑息」00/02/06      卜部 知典

吉野川の可動堰建設に関する住民投票が成功してよかった。
結果がいずれで有ったにしても、投票率が50%を超え、開票されてよかった。
せっかく行なうのだから、やはり白黒はっきりさせたいものだ。

今回の住民投票は、全国ではじめての公共工事に対する住民投票と言うことで、かなり注目された。
それにも係わらず、住民投票条例が制定されるまでは、いろいろと困難があったようだ。
特に河口堰建設推進派の攻勢に遭い、結局、投票率が50%を割った場合、開票せずに破棄してしまうという異例の条件が付けられることで、成立にこぎつけた。

しかし、この推進派の姑息とも思える条件が、結果としてはほぼ100%に近い反対票の獲得につながり、建設反対派に圧倒的な勝利をもたらす結果となった。
もっとも、投票率と、反対票の率を単純に掛けても、有権者総数の過半数になるわけだから、仮に投票に行かなかった人全員が推進派で、その人達が全員投票に行ったとしても、反対派の勝利にはなっていた。
しかし、投票総数のほぼ全てが反対票だったことで、反対派の活動にはさらに勢いがつくことは確実だろう。

もともと、この不景気ななか、こういった国の巨大な公共工事は、建設業界に刺激を与え、その結果地域経済全体に活力を与えるかもしれないので、一概に反対とは言いきれないと、考える人もいるだろう。
それに、実際生活に直接影響しない人も多く、余り興味のない人も多かったようだ。
そういった要素もあって、はじめは投票率はそんなには高くないだろうと言うのが、大方の見解だったようだ。

しかし、建設推進派の中に、投票に行かないように進める人達が増え始め、正々堂々と戦わない姑息な態度が、態度を決め兼ねていた人達の意識を目覚めさせるきっかけとなった。
多少の経済効果はあるかもしれない。
しかし、環境に与える影響も心配だし、国費の無駄使いだとすれば、結局そのつけは自分達の支払う税金にも跳ね返ってくる。
そういった、公共工事の有り方そのものにまで目を向ける、きっかけとなってしまった。

はじめに、建設有りき。
はじめに、予算有りき。
そんな、今までの建設行政のありかたにメスを入れる事になるのではないだろうか?

投票の結果を受け、徳島市の市長は、公式に建設反対の意を表明した。
一方、建設大臣は、民主的な投票を無視した“声無き声”をやたらと気にしている。
“声無き声”の何がそんなに可愛いのかわからないが、果して民主主義国家の政治家として、どちらが正しい態度なのであろうか?

目次へ戻る!