ひるねの時間

「地方自治」01/02/14      卜部 知典

地方自治体の独立性を確保するためには、国からの経済的な独立が欠かせない。
そのためには、何か特別な財源でもない限り人口や企業の確保しかないだろう。
日本の自治体は、小ぶりなものが多く、人口数千人からひどい所では数百人程度の自治体もある。
これでは財源も乏しく、住民から集められる税金は町内会の予算程度で、地方自治が成り立つはずがない。

大きな総合病院を維持するには人口10万人、適法のゴミの焼却施設を維持するのには、人口30万人が必要なのだそうだ。
学校、警察署、消防署、文化施設、運動施設、中央市場など、生活に欠かせないものを維持するにはそれぞれ一定以上の人口が必要だ。これらすべてを、自前で整えようと思えば、50万、100万といった単位の人口が必要になるがこれは大都市圏でないと実現不可能だ。
しかし、10万〜30万人程度なら、各都道府県の各地域に作ることが可能だ。
これなら最低限必要な施設は作れるし、中核の自治体となって周辺市町村を巻き込めば、かなりのものを整えることが可能となる。

もちろん、自治の独立性の向上のみが良いと言う訳ではない。
例えば富山県の有る村では、人口が少ないのを逆手にとって、国からの交付金などをもとに全世帯にパソコンを配った。大きな自治体では不可能なことだ。

しかしこれも、たまたま国の目指す方向と合致していただけで、自治体が住民のために良かれと思ってすることが、必ずしも国の 援助を受けられるとは限らない。
同じ目的を果たすにも、国の決めたやり方通りでないと、補助を打ち切られてしまうことも多い。
そのため、不要とわかっている道路や治水施設を作ったり、地質や地形に合っていない農業設備を整えたりしなければならないことも多いと聞く。これらも、財源を国に握られていることから来る弊害だ。

こういったことは、都市計画においても同様だ。
駅を中心に道路の幅や本数、公園の規模。商業施設の有り方など様々な事について決められている。
全国どこに行っても、同じような街しかないと感じることは多いが、その大きな原因にもなっている。
うわべだけ街は発展しても、個性のない在り来たりなものにしかならず、真の繁栄は望めない。

こういったことを考えると、ある程度の自治体の自主性と独立性はやはり必要だと思う。
そのためのひとつの手段として、合併によってせめて10万人規模、できれば30万人規模の自治体作りが必要だと思う。

もちろん、規模の小さい田舎町や農村もあっていい。
ただそういったことを望む所は、都会と同じような住民サービスや利便性は求めず、のんびりと穏やかに暮らすべきだ。
さもないと、結局どこに住んでも同じになって、“ふるさと”なんて無くなってしまう。

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