バリ・ジャワ島周遊紀行

 平成14年2月、友人らと4人で赤道直下のバリ島とジャワ島巡りの旅をしました。雨期ではありましたが、ムッとするような熱帯性気候に変わりはなく、正に“常夏の太陽と神々の島”の印象でした。
 コースは、バリ島(バトゥール湖)ジョグジャカルタ・ジャワ島(ボロブドゥール寺院、プランバナン寺院)バリ島(ブサキ寺院、バリ舞踊)の周遊6日間でした。旅の一端を、 「歴史と伝統の島・ジャワ」と、 「神々と芸能の島・バリ」に焦点を当てて紹介したいと思います。
  【旅行日;  ’02.2.20〜25


歴史遺跡を見る (ジョグジャカルタ YOGYAKARTA)

 バリ島のングラ・ライ空港から約1時間。ジョグジャカルタは、ジャワ島の中部地域の中心都市です。かつて宮廷文化が栄えた古都であり、今も、ボロブドゥールプランバナンなどの歴史遺跡や伝統芸能、手工芸が大切に受け継がれています。言ってみれば、ジャワの京都です。
 ジョグジャカルタとは、「平和で、栄える」という意味だとのこと。国立大学を有する学園都市でもあるとのことでした。

世界遺産・【ボロブドゥール寺院】【プランバナン寺院】
ジョグジャカルタの北西約42kmに位置する、巨大な仏教遺跡ボロブドゥール寺院
8世紀後半から9世紀前半にかけて建立されたと考えられていますが、
誰が、何のために造ったものなのか、さまざまな推測はあるものの、事実は謎のままとのこと。

ジョグジャカルタから東へ17km、プランバナン平原にはジャワ有数の寺院遺跡群が点在します。
その中の一つ、ヒンドゥー教遺跡プランバナン寺院
 中央で、ひときわ華麗にそびえるのが、高さ47mのシバァShiva堂です。

 
ボロブドゥール寺院              プランバナン寺院

【ボロブドゥール寺院と回廊のレリーフ】
 土台の底辺が一辺124mの正方形、高さは42mもある巨大な安山岩の遺跡です。
 地上に見えるのは9層。下5層は“有形の界”と呼ばれる回廊になっており、各々の壁面には浮彫のレリーフが施されていて、計1,300点もあるとのこと。第1回廊には、釈迦の生涯の物語「仏陀伝」が描かれています。上3層は、円壇のテラスになっており、この“無形の界”には、計72の釣鐘型ストゥーパ(仏塔)が規則的に並んでおり、中には仏様が鎮座しています。
 巨大な石造建造物と見事な浮彫が調和し、幻想的な美しさを見せていました。

【プランバナン寺院と崩壊した石材の山】
 中央のシバァ堂の左右には、ヴィシュヌ堂ブラフマ堂が立ち、それぞれの神々の石像が安置されています。その3大聖堂の前には、小ぶりなお堂がやはり3つ並んでいて、神々の乗り物となった動物が祭られています。
 中央シバァ堂の外壁には、「ラーマーヤナ物語」を綴った精緻なレリーフが施されています。神秘的で美しい、見事な石彫です。
 遺跡の崩壊は激しく、周辺には石材の山が広がっています。現在も復元作業が続けられていますが、まだ、222ものお堂が未整備とのことです。いつの日か修復が完成したら、ボロブドゥールをしのぐものになるのかも…。



神々への敬虔な祈りを見る (デンパサール DENPASAR から バリ BALI 東部へ)

 “神々の島”・バリ島の人々の暮らしは、バリ・ヒンドゥー教の信仰と密接に結ぶ付いています。
 バリの村々には、プラ・プセ(祖先の霊を祭る寺)、プラ・デサ(村の寺)、プラ・ダレム(死者の寺)の少なくとも3つの寺院があり、こうした寺院が、島内に1万5000もあるとのことです。
 朝な夕なの感謝の祈りはむろん、オダラン(寺の創立記念日の祭り)やクニンガン(祖先の霊を迎えて祝う)、更には結婚式、葬儀、成人式、また、バリ・ヒンドゥー教の母寺であるブサキ寺院での儀式もあります。
 1年中、島のどこかで祭りや儀式が行われていて、島全体に神々しい雰囲気が漂っている感じです。殊に、バリ東部は、その感が強く実感できる地区のようです。

【ブサキ寺院】【ジャガトナタ寺院】
州都デンパサールから東方へ車で約2時間。ブサキ寺院は、
バリの最高峰アグン山(3142m)の中腹にあり、バリ・ヒンドゥー教寺院の総本山です。
建立されたのは11世紀で、バリ島最古の寺院として君臨しているとのこと。

デンパサール市内のジャガトナタ寺院
バリ・ヒンドゥー教の最高神サン・ヒャン・ウィディを祭る寺院です。
満月の夜には、供物を捧げる人々が集まり、ガムランの音が鳴り響くのだそうです。

 
ブサキ寺院              ジャガトナタ寺院

【ブサキ寺院と儀式】
 ブサキ寺院の境内は、7つの高台に分かれ、大小さまざまな30の寺院があります。
 ヒンドゥー教のシバァ神(破壊神)、ヴィシュヌ神(繁栄神)、ブラフマ神(創造神)の3大神を中心に、バリの神々がすべてここに祭られているとのこと。
 年に50回以上もの大小の儀式が行われるとのことです。加えて、5年、10年ごとの全島をあげてのお祭り、更には、100年に一度のバリ・ヒンドゥー教最大の大祭もあるとか。準備期間も含めると、ほぼ1年中、何らかの儀式が行われているようです。
 この日も、バリ式正装した人々が集まって、儀式を行っていました。

【祭りに向かう村の人々の群れ】
 ブサキ寺院からの帰路、ある村で遭遇した祭りに向かう人々の群れです。
 供物を頭に乗せたり、吊したりしながら、神妙に歩いていました。長い長い行列でした。村の寺院に行くのでしょう。
 バリの寺院には普段神はおらず、祭りや儀式のときに降りて来て、人々からの供物でもてなされると考えられています。したがって、寺院に本尊はなく連座があるだけです。
 バリ島民の一生は、宗教儀式に始まり、宗教儀式に終わると言われ、神々と深く密接に結び付いているのです。正に“神々の島”であることが実感できました。



南国の楽園と伝統芸能を見る (ブキッ・ジャンブール BUKIT JAMBUL と デンパサール周辺)

 バリには、さまざまな顔があります。
 デンパサールを離れて、一歩奥地へ入ると、開発とは無縁の、今も昔も変わらない田園風景を見ることができます。デンパサールから車で約50km、ブキッ・ジャンブールの山道で見る風景も、その一つです。“南国の楽園”ともいわれる所以でしょうか。
 しかし、何といっても大きく特色づけられるのが、“伝統芸能の島・バリ”でしょう。
 ジャワから伝えられてきたヒンドゥー教と、バリに古来から伝わるアニミズム(精霊信仰)が融合して造られてきたのが、独特のバリ・ヒンドゥー文化です。その一つが、篤い信仰心とともに育まれてきた、宮廷舞踊やガムラン音楽などの伝統芸能です。だからこそ、舞踊も音楽も、それは神への奉納であり、人々の暮らしの中に根をおろし、華麗に生き続けているのです。
 ここで紹介する、ケチャ・ダンスレゴン・ダンス、また、トップページのバロン・ダンスは、デンパサール周辺の村にある集会場や、ホテルの舞台で観劇したものです。

【ブキッ・ジャンブール】
山肌に何十段と続くライス・テラス(棚田)
1年中、米作りができるバリでは、同じ斜面に、稲穂がたれている田もあれば、
緑の苗田もあるといった光景は珍しくはないようです。
棚田の脇には、ヤシの木が風に揺れていて、いかにも南国の風景です。

見渡せば、広々と遙かに田園風景が広がり、
その先に、コバルトブルーの海と南国の空が輝いて見えました。

 
田園風景                ライス・テラス

【ケチャ・ダンス Kecak Dance】
 上半身裸の男たちがおよそ100人ほど円陣を組み、「チャッ、チャッ」と奇声を発しながらダンスを行います。
 もとは、サンヒャン(祭祀芸能)の伴奏音楽だったのだそうですが、ドイツの画家ウォルター・シュピースのアドバイスで、「ラーマーヤナ物語」を採り入れ、さらに女性の踊りも加えて舞踊劇に創作されたものだそうです。
 物語は、魔王にさらわれた王女を王子と猿の援軍が助け、悪を滅ぼすというもの。「チャッ、チャッ」と、掛け声を唱和する男たちは、猿の援軍を表現しています。そのリズムカルなコーラスは、鮮烈な感動として今も脳裏に残っています。

【レゴン・ダンス Legong Dance】
 ガンブー(古典舞踊劇)とサンヒャンとが結び付いて生まれたものだとのこと。貴族の儀式のために奉納されることが多く、バリ舞踊の花、バリの踊りの中で最も優美で可憐な踊りであるとのことです。繊細にしなる指先、魅惑的な目、官能的で、優美な踊りです。
 人気が高いのが、レゴン・ラッサム(ラッサム物語)だそうです。

 トップページの【バロン・ダンス Barong Dance】は、聖獣バロンと魔女ランダの終わりなき戦いを描いています。バリでは、良い魂と悪い魂はいつも共存していると信じられているのだそうです。






同行の友人らとボロブドゥール寺院で(無断掲載ご容赦を)



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