晩 秋 の 白 樺 湖 周 辺 の 旅

 「秋の信州ビーナスラインの大パノラマを見に来ませんか」と、上田市の知人に誘われていましたが、出かけたころは既に秋も深まる11月上旬でした。時しも、蓼科山や美ケ原は初冠雪、ビーナスラインは冬の始まりでもありました。
 秋雨に煙る信州の鎌倉・塩田平の古刹と初冠雪のビーナスライン、秋から冬へと移ろう、風情豊かな旅の一端を紹介いたします。
旅行日; ’01.11.3〜4

                

見 る
【安 楽 寺】
 上田市街の西、北向観音を中心に広がる別所温泉街にあります。鎌倉初期に開かれた、信州最古の禅寺とのこと。日本唯一の八角形の三重塔国宝。一見四重塔に見えますが、一番下の屋根は、裳階(もろこし)という飾り屋根なのだそうです。
 境内のもみじが見事に紅葉し、小雨に煙る八角三重塔の風情に鮮やかに彩りをそえていました。境内は自由ですが、三重塔域へは拝観100円です。

  
安 楽 寺 本 堂                国 宝 ・ 八 角 三 重 塔

【前 山 寺】
 上田市の南西に広がる塩田平は、鎌倉時代に信濃国守護の置かれたところ。塩田北条氏の本拠地とのことです。
 鎌倉から室町時代にかけて造られた文化財が数多く残っていますが、代表的なのがこの前山寺。弘法大師が開き、後に塩田北条氏が祈願所としたという古刹です。室町初期建立とされる三重塔は、国の重要文化財。“未完成の完成”と賛辞されるとおり、完成されないままで十分美しい姿の塔です。本堂の拝観100円。
 本堂で食べたクルミおはぎ(700円)のおいしさが忘れられません。
 なお、別所温泉から前山寺にかけて遊歩道が整備されており、「鎌倉街道歴史遊歩道」と称し、古刹や道祖神巡りが楽しめるそうです。いかにも信州の鎌倉にふさわしい計らいです。

前 山 寺・三 重 塔      クルミおはぎ         本 堂 の 庭

【白樺湖とその周辺】
 湖面標高1,462mとか。白樺湖は周囲約6Kmの人造湖。湖畔にアミューズメント施設をそろえたリゾート地です。
 夜来の雨音も静まり、冷えを感じて目を覚ますと、すっかり夜が明けていて、霧がはれるにつれて澄んだ青空が広がってきます。見渡すと、周囲は黄ばんだ山肌が、紅葉の終わりを告げるかのように連なっていました。気が付くと、その背後の高山がうっすらと白く輝いています。はっと息をのむと、今朝の冷え込みが初冠雪をもたらしたのでした。蓼科山でしょうか。
 写真は、早朝の白樺湖と、白樺高原に向かう途中で遭遇した、初冠雪の高原風景です。白樺と黄ばんだカラマツ、うっすらと初雪をかぶった杉林とのコントラストが、研ぎ澄まされた美しさを見せていました。

  
白 樺 湖                  初 冠 雪 の 高 原 風 景

【白 樺 高 原】
 蓼科山の北西斜面に広がる高原が、ここ白樺高原です。
 蓼科牧場牧場駅からゴンドラリフトで5分(往復900円)、自然園駅に着くと辺りはすっかり冬景色。標高1,830m、高山植物の宝庫・御泉水自然園も、はや冬支度でした。雪に覆われてしまいましたが、カラマツとミズナラが茂る林の中には散策路が整備されており(入園250円)、主な花の見頃は6〜7月とのこと。
 見下ろすと、晩秋の高原が広がり、遙かに女神湖が見えました。今度はゴンドラリフトを下って、その女神湖に着くと、“女ノ神山”の別名を持つ蓼科山が白く輝き、うっすらと湖面に姿を映していました。鳥が1羽、湖面に浮かぶ枯れ木の上で羽を休めていました。

自然園駅付近からの眺望        鳥が1羽         蓼科山を映す女神湖

【霧ヶ峰ビーナスライン】
 信州ビーナスラインは、茅野〜蓼科高原〜白樺湖〜車山高原〜霧ヶ峰高原〜美ヶ原高原へと至る、約75kmの観光道路です。平成14年2月からは全線無料化されたとのことです。
 今回は、白樺湖から車山高原霧ヶ峰高原へとぐんぐん登り、絶景を楽しみながらの高原ドライブでした。ただ、雪のための交通止めで、終点の美ヶ原高原までは進むことができませんでした。
 初冠雪の恵みを喜んだ一方で、思わぬハプニングもありましたが、八ヶ岳のすそ野が広がる大パノラマを眺めたり、背後にうっすらと見える富士山に喜んだりして、心が洗われるような高原風景を楽しむことができました。また、八島湿原では、湿性植物の花を思い浮かべながらの散策もできました。

  
八ヶ岳すそ野と富士山を望む              初冬の八島湿原

泊まる
【白 樺 湖】
 白樺湖の南側湖畔の少し高台にある、「景陽」という観光ホテルに泊まりました。岩風呂・檜風呂の露天風呂からも、大展望風呂からも、蓼科山をはじめ雄大な自然が望めるとのことでしたが、暗くなってからの到着で残念ながら思いは果たせませんでした。
 翌朝、眼下の白樺湖と霧がはれるにつれて広がる高原風景を見渡しましたが、正に大自然に抱かれる思いでした。
 リゾート地であるだけに、湖畔には大小様々なホテル・旅館があり、民宿やペンションも数多くあります。
【別 所 温 泉】
 今回は、1泊2日の旅でしたので素通りしましたが、できれば別所温泉でもう1泊したい。歴史と文学散歩もしたいし、外湯巡りもしてみたい。じっくりと古刹を巡るには、もう1日必要のように思われます。

道路及び案内メモ
【道路メモ】
北陸自動車道から上信越自動車道へと進み、坂城ICで下りて上田市の知人宅を訪問しました。その後、別所温泉街や塩田平の古刹を見学してから、平井寺トンネルを通って国道152号へと進み、白樺湖へ向かいました。直接、白樺湖へ行くのでしたら、上田管平ICから下りて、国道18号・152号と進むのがいいでしょう。約47km。
白樺湖から白樺高原・女神湖へは、県道40号を約6kmです。
【案内メモ】
前山寺まで行ったら、戦没画学生慰霊美術館無言館」にぜひ立ち寄りたい。小高い丘の上に建つ美術館で、第二次世界大戦で亡くなった画学生の絵画やブロンズ像が展示されています。志半ばで戦場に散った画学生の思いが悲しくしのばれます。300円〜500円志納(観覧後)。
上田市内では、他に、真田昌幸ゆかりの櫓が復元され、今は市民公園として整備されている上田城址池波正太郎真田太平記館(観覧300円)に立ち寄りました。さすがに真田氏ゆかりの地です。
お土産には、市内のみすゞ飴本舗飯島商店で、生ゼリー「三宝柑幅居袋」とジャム「四季のジャム」を求めてきました。珍しく、また、格別の美味しさでした。

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